2022年度活動実績
2022年度は、今後どのように展開していくか予測困難なカーボンニュートラルをテーマとするため、まずは情報共有からとにかく始めるということで、全体の計画や目標を設定せずに、スタートを切りました。
カーボンニュートラルを考える上での最大の難しさは、自身のかかわる事業の範囲内で完結しないことであり、全体としてどうなるのかについて、一通りのバランスの取れた予備知識がまず必要であると考えられます。このため、講演会のプログラム編成にあたっては、全体を鳥瞰する視点を重視し、基本的な考え方や内外の政策動向を整理した後、日本のGHG排出量の多くを占める主要なセクターごとに実質的な責任を担う各業界のカーボンニュートラルに向けた取組みと課題の共有を目指しました。その後、内外のR&D動向の概要をレビューしたうえで、低炭素から脱炭素になることで、重要性が格段に上がったネガティブエミッション技術と、現状のままでは持続不能となる石油バリューチェーンの代替技術について、最新の技術動向を共有することとしました。
3月の公開イベントの開催の後、各回3名の講師を招いた講演会を8回、会場とzoomのハイブリッドで開催し、結果として、各回平均120名以上の参加がありました。会員の皆様の本研究会への主たる参加目的は、カーボンニュートラルに関する最新技術情報の収集や他社・異業種での取り組みの状況把握であったことから、開催した講演会は一様に高い評価を受けています。参加者からのご意見や感想からいえることは、基本的に皆他業界のことはほとんど知らないということで、大半の企業の講師からも、異業種での状況を知る機会がなく、カーボンニュートラルを考えるうえで異業種間で議論することの重要性を感じたとの感想をいただきました。また、他の講演会等では表面的な話に終始することが多いのに対して、議論が活発で、他では聞けないホンネの話ができる点も高く評価されています。
一方で、殆どの参加者は専門分野以外の話を聞くことになるので、講演の中身を正しく理解してもらうこと自体にも配慮が必要であることがわかり、講師へのきめ細かいリクエストや、研究会の要旨を作成して講演資料と合わせて論旨を後から追って理解できるようにするなど対策を講じましたが、さらなる工夫が必要であると思われます。そして、カーボンニュートラルを考えるためには、非常に幅広い知識が必要であることが改めて認識され、会員間で議論がかみ合っていくためには、さらに技術面以外も含めた知識の集積と理解が必要であることがわかりました。
また、業界横断での課題解決に向けた取組みのきっかけづくりという観点に関しては、コロナ禍で飲食を伴った懇親会形式の交流会が一度も開催できず、そもそも来場参加者の割合が少なく、十分な交流の接点が作れなかったため、満足な成果は得られなかったと思われます。
これらの課題については、2023年度の活動計画の中で対応していく予定です
2022年度の講演会開催実績(見学会はなし)
年度テーマ「カーボンニュートラルにかかわる現状の把握と課題」
※講演会はすべてOSTEC会場とzoomのハイブリッド開催。各回、講演3件・総合討議(約3.5時間)+交流会(会場のみ、飲食の提供はなし)。
※各回の講演資料・研究会要旨は、会員ページでご覧になれます。
2022年3月29日(火) キックオフイベント
「カーボンニュートラルシステムの確立をめざして」
・研究会会長挨拶 大阪大学大学院工学研究科 機械工学専攻 教授 小林 英樹
・基調講演「カーボンニュートラル実現に向けた対策のあり方」
(公財)地球環境産業技術研究機構 システム研究グループリーダー 秋元 圭吾 氏・研究会の概要・2022年度活動計画 (一財)大阪科学技術センター 常務理事 田畑 健
・名刺交換会
参加者 129 名(来場+ウェビナー)2022年5月16日(月) 第1回定例研究会
「カーボンニュートラルをめぐる世界の現状と動向」
・講演①「日本版カーボンニュートラルシステムの論点」
大阪大学大学院工学研究科 機械工学専攻 小林 英樹 教授(研究会会長)
・講演②「IPCC AR6 WGⅢレポートの概要とカーボンニュートラルに向けた各国の動向」
(公財)地球環境産業技術研究機構 システム研究グループ 和田 謙一 主任研究員
・講演③「日本のゼロエミッション化に向けた政策の動向とその課題」
(一財)日本エネルギー経済研究所 工藤 拓毅 理事
・総合討議
・名刺交換会参加者 127名(来場+Zoom)
2022年6月20日(月) 第2回定例研究会
「エネルギー業界のカーボンニュートラルに向けた取組み」
・講演①「関西電力グループにおけるゼロカーボン社会への取り組み」
関西電力㈱ 研究開発室 研究開発部長 冨岡 洋光 氏
・講演②「都市ガスのグリーントランスフォーメーションに向けた技術革新への挑戦」
大阪ガス㈱ エネルギー技術研究所
エグゼクティブリサーチャー 大西 久男 氏
・講演③「カーボンニュートラル実現に向けたENEOS中央技術研究所の取組み」
ENEOS㈱ 中央技術研究所 先進技術研究所長 佐藤 康司 氏
・総合討議
・名刺交換会参加者 155名(来場+Zoom)
2022年8月3日(水) 第3回定例研究会
「素材業界のカーボンニュートラルに向けた取組み」
・講演①「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」
日本製鉄㈱ 大阪支社 部長(技術統括)薄板商品技術室長 立花 伸夫 氏
・講演②「カーボンニュートラル社会の実現に向けた炭素-水素循環技術の開発」
旭化成㈱ 上席理事 研究・開発本部 化学・プロセス研究所長 鈴木 賢 氏
・講演③「カーボンニュートラルに向けた太平洋セメントの取り組み」
太平洋セメント㈱ カーボンニュートラル技術開発プロジェクトチーム
企画管理グループ 主席研究員 星野 清一 氏
・総合討議
・交流会(飲食なし)参加者 131名(来場+Zoom)
2022年9月16日(金) 第4回定例研究会
「建設・インフラ業界のカーボンニュートラルに向けた取組み」
・講演①「建設業界のカーボンニュートラルに向けた取組み 大林組の取り組みと課題紹介」
㈱大林組 執行役員 本社設計本部 副本部長 小野島 一 氏
・講演②「大和ハウスグループのカーボンニュートラルへの挑戦」
大和ハウス工業㈱ 技術統括本部 環境部 部長 小山 勝弘 氏
・講演③「脱炭素社会の実現に向けたHitz日立造船の取り組み」
日立造船㈱ 理事 脱炭素化事業本部 計画部長 美島 雄士 氏
・総合討議
・交流会(飲食なし)参加者 123名(来場+Zoom)
2022年11月1日(火) 第5回定例研究会
「最終製品製造業界のカーボンニュートラルに向けた取組み」
・講演① 「トヨタ自動車のカーボンニュートラルへの取り組み」
トヨタ自動車㈱ CN開発部CN駆動・EHV開発室 室長 滝澤 敬次 氏
・講演② 「冷凍空調産業の最新動向とカーボンニュートラルに向けた今後の課題」
ダイキン工業㈱ CSR・地球環境センター 担当部長 北川 武 氏
・講演③ 「リコーにおけるサーキュラーエコノミー・環境エネルギー事業への取り組みのご紹介」
㈱リコー 環境・エネルギー事業センター 第二開発室長 原田 忠克 氏
・総合討議
・交流会(飲食なし)参加者 145名(来場+Zoom)
2022年11月22日(火) 第6回定例研究会
「カーボンニュートラルに関するR&Dの方向性」
・講演① 「脱炭素社会に向けたクリーンエネルギー戦略」
経済産業省 産業技術環境局 環境政策課
エネルギー・環境イノベーション戦略室長 三輪田 祐子 氏
・講演② 「グリーンイノベーションに向けた化学の技術動向」
早稲田大学 理工学術院 教授 関根 泰 氏
・講演③ 「カーボンニュートラル(CN)に関する海外R&Dの動向」
国立研究開発法人 新エネルギー産業技術総合開発機構 技術戦略研究センター
統括主幹(兼)調整課長 正影 夏紀 氏
専門調査員 鈴木 茂雄 氏
・総合討議
・交流会(飲食なし)参加者 112名(来場+Zoom)
2022年12月16日(金) 第7回定例研究会
「ネガティブエミッション技術」
・講演① 「CO2地中貯留の海外動向および国内の社会実装に向けて」
(公財)地球環境産業技術研究機構 CO2貯留研究グループリーダー 薛 自求 氏・講演② 「ネガティブエミッション技術として期待されるDirect Air Capture の開発について」
川崎重工業㈱ 本社 技術開発本部 技術研究所
エネルギーシステム研究部 主事 沼口 遼平 氏・講演③ 「生態系を利用したCO2削減と地球規模でのカーボンニュートラルについて」
国立環境研究所 地球システム領域 領域長 三枝 信子 氏・総合討議
・交流会(飲食なし)参加者 92名(来場+Zoom)
2023年1月31日(火) 第8回定例研究会
「石油バリューチェーンの未来」
・講演① 「人工光合成型グリーン水素製造技術の現状/展望:経済性とLCAの観点から」
三菱ケミカル㈱ エグゼクティブフェロー 瀬戸山 亨 氏
・講演② 「カーボンニュートラルに貢献するグリーンバイオプロセスの開発」
(公財)地球環境産業技術研究機構
バイオ研究グループ・グループリーダー/主席研究員 乾 将行 氏
・講演③ 「Carbon Neutral の国際海運に与える影響」
㈱商船三井 技術革新本部 技術部 理事 大薮 弘彦 氏
・総合討議
・今後の活動の進め方と2023年度の活動計画について 事務局
・交流会(飲食なし)
参加者 97名(来場+Zoom)